【星野光の術師達】空白の記録[第一章]

エテルネルの家族ってどんな人?

そんなことを授業が同じだった術師に言われた。先程の授業内容のせいだろう。『3時間目:生命の記録』と書かれている自分の手帳を横目に見る。心底、興味もないが「ここ」にいる限りは出来るだけ目立たないようにしなければならない。教師たちが後から小言を言ってくるからね。

「エテ君のお母さんって絶対美人だと思うの。凄く優しくて可愛がってくれそうだよね~!」

「お父さんもスタイル良さそう!」

「・・・何処からそのような想像が沸くのかが謎だね」
半分ため息を混ぜながら言った。

「だって、『親に子は似る』っていうでしょ?」


僕は何故だか冷や汗が出た。違う、違う。


「すまない。用事を思い出したから失礼させてもらうよ」
正常を保てているかが心配だ。

「私、まだエテ君と喋っていたいのになぁ」

「用事なら後回しにしちゃえばいいのに...」

「じゃあ、昼食私達と一緒に食べようよ!」


何故そこまで僕にまとわりつくんだろう。


「これから研究があるから昼食は一緒に食べれないんだ。」

そう言って僕は立ち去った。後ろから

「今度一緒に食べようねー!」

なんて聞こえたので、軽く手を振っておいた。



部屋に戻ってさっきの話を忘れる事にしよう。自室までは近かったので歩いくことにした。
100m先に数人の男の術師が道を塞いでいる。とても騒がしい。

「僕の部屋はそこなんだ。退いてくれないかな」

そう言うと男の術師たちは立ち上がってこちらを睨んだ。何をしているかと思えば下らないことをしているね。


「俺達さ、今楽しく喋っているのに邪魔するなよ」

「ほんとによぉ。お前もそう思うだろ?」

その男が後ろにいた術師を突き出した。

「は...はい...」

彼は顔に傷を負っていた。今にでも泣きそうだ。
推測だけど、弱者虐めだろう。

「君達が楽しく喋っていよう何をしようが僕には関係ない。それとも弱者を虐めるのが趣味なのかな?そう言うのは他所でやってくれ。
...もう一度言ったほうが良いかい?退いてくれないか」

「ってめぇ…!!なめてんのか!!?」

「好きに言いやがって...図に乗るなよ!!」

男たちが杖を出してきた。最近の術師は血気盛ん過ぎないかな。

「泣いて媚びろよ。...氷炎の棘!!」

「消し炭にしてやる...。青龍の雷!!」


技量は良好、しかし魔力効率が悪い。彼らは成長の余地は無さそうだね。残念だよ。

「ニーダーラーゲ(敗北)」

時が静止する。
全ての生命活動が止まり時の刻む音は消える。その間に男たちを違う場所へ転移する。場所は教師たちが沢山いる場所。
もういいだろう。

「アウフヘーブング(解除)」

これで僕は部屋に入れる...はずだった。


「助けて頂いて...。あ...ありがとうございます!!」

君は僕の耳を壊す気なのかな?至近距離すぎるよ。

「僕は君を助けることをしていない。気のせいだよ。」

「あの人たちを追っ払ってくれたんですから、助けてくれたのも当然です。なんてお礼をしたら良いか...」

少年の目には涙があった。

「今回は君の運が良かったんだ。僕がいたからね。
次は、どうするのかな。」

少年は口を閉じて下を向いた。泣いているのだろう。そうだろうね。下は何も出来ないのだから。

「だって...どうせ何を言っても暴力されるだけで...何も解決...しないんですよ!!」

してもいないことをよく言えるね、僕は近づいて少年の顔に手を添え目線を合わせた。


「君は一つ間違っているようだね。」

「何を...ですか?」

「あのような者達には一度強く言わなければ何も学ばない。言わなければ図に乗るだけだよ。」

少年は大きく目を見開いていた。その瞳は輝いているようにも見える。
手を離しても少年は僕を見ていた。

視線が強かったが僕は自室の扉を開き部屋に入った。