【異形団】大嫌いで大好きな貴方※鯛サザ

最近、アイツをよく見る。寒気がするほど嫌な人だが、姿や声もあの人だ。アイツはあの人の形をした奴だと考えてもあの人を思い出してしまう。もやもやしながら、くわちゃんと手を繋いで遊んでいたら
「ん~、さざんかどうしたの?さいきん、へんだよ?」
「変かナ...ボクはいつも通りだけどなァ...」
「へん、だよ!!ブリさんがいなくなってからげんきがないきが...するっ!」
そうなのかもしれないなぁ~と思いながらくわちゃんの頭を撫でる。くわちゃんの頭は撫でやすい。くわちゃんは撫でてるとき目を伏せて穏やかな顔をする。その顔は少女とかけ離れている...と言ったら変だが大人びているような感じだ。暗くなり始めたのでくわちゃんに「帰ろうか」と言うと眩しい笑顔をこちらに向けて「うんっ!」と言った。手を繋ぎ直し館へ向かった。


「なんや、まだお前なんか」
少年はそう言って、近くにあるソファーに座った。少年の視線の先には男が微笑みながら部屋の隅に立っている。男は顔を変えずに言葉を返す。
「ははは、暫くはこのまま『居させて』頂こうかと思っています」
少年はなんでもええんやけどな、と言ってポケットから飴を取りだし音を立てながら噛み始めた。少年が手招きすると男は少年の方に歩きだした。少年の当たっている電灯の光を遮る所で男は立ち止まり言った。
「何用でしょうか、黒椏様」
男は言い終えると膝を地に付け目線を合わせた。少年はまたポケットから飴を取りだし男に差し出した。赤色に包装された飴、男はよく分からずとりあえず受け取った。
「黒椏様...?私には主旨が理解できませんが...」
少年は、めんどくさそうに
「あー、そうやったな。まぁ、『それ食え』」
と言った。男は命じられた通りに赤色の包装を取り、飴を口に入れた。口に入れた飴は恐らく甘味が広がって要るのだろう。そして、この味は「レモン味」だ。味覚がなくても口に入れたらおおよそは分かる。
「どうや、旨いやろ?塑羅と町に行った時に買ってきてな。お前にもやろうと思って忘れてたわ」
少年が笑いながら飴を噛んでいる。噛み終えては、また取り出して口に入れているが...そのポケットにはどれだけの飴が入っているのかが少し気になってしまった。
「私のような者にありがとうございます、黒椏様」
頭を少し下げ、礼の言葉を言った。
「お、おう。そんなたいそうなもん(物)でも無いけどな」
部屋にある大時計が音をたてた。ふと見ると長身は上を指していた。少年がゆっくりと立ち上がろうとしたので男は手を差しのべた。不必要な事をしたと思ったが少年は手を取り立ち上がった。少年がドアに向かっていくのを眺めていようとしたら
「あ、ブリタルも来(き)いや。夕食、食べるやろ?」
少年が振り返り、言った。自分(ブリタル)はつくづく恵まれた場に要るのだと感じた。
「了解しました。黒椏様」
少年が部屋から出たのを確認すると電灯のスイッチを押し、消した。


「さざんかっ!おきてよ!!」
くわちゃんの声で目が覚める。顔をぐしゃぐしゃにしてくわちゃんがこちらを見ていた。あれ、何で僕は寝ていたんだっけ。何だったかな。ぼんやりと考えてると足に激痛を感じた。起き上がって、見ると所々に赤い血が流れていた。そうだ、思い出した。くわちゃんと帰っていたら異形の過激組織に襲われたんだ。僕らは森に逃げこんで敵を撒いたんだった。とりあえず、目の前にいるくわちゃんを抱き締めて落ち着かせよう。くわちゃんを抱き締めると、くわちゃんは僕の背中に手を回して声を我慢して泣いた。
「ゴメンネ、怖かったよネ」
くわちゃんは弱々しくも首を横に振って言った。
「さざんか...っが...いなくなっだ...とおもったもん...」
回した手が強くなったのが分かった。あの時、能力を使っても良かったが、敵が多すぎた。それにくわちゃんが居た。見上げると月の光が木々の葉から漏れていた。くわちゃんを泣き止まそうと声をかけた
「くわちゃん、もう大丈夫だヨ。もう少しで帰れるから」
が、くわちゃんは腕の中で眠っていた。泣き疲れたのだろう。少し足を動かそうとしたら血がまた少し流れたので大人しく安静することにした。


少年が冷蔵庫を覗いてる後ろで男は待っていた。少年が「うーん」と唸りながら冷蔵庫と睨み合っていた。男は近くにあった「簡単、料理」と書かれた本を手に取り軽く頁を捲った。カロリーや手順、用意するものが書かれてあった。他にも何か書かれていたが興味が無かったので本を閉じ、元にあった場所に置いた。少年の方に目を向けると何とも言い難い顔で虚空を見ていた。
「いつもやったらティフルがいるんやけど...今日はデートとか言ってたしなぁぁ...あかん、何を作れば良いか悩む...」
何やら悩んでいるようだが己には関係ないだろうとその光景を眺めていた。すると扉が荒々しく音を立て、開いた。音の主は男を見るなり手招きした。男は少年を少し見たが、少年は瞑想中だったので音を立てずに部屋を後にした。音の主はピンクのスマホを片手にこちらをじっと凝視している。青い髪が綺麗な方だ。しかし何かを疑われてるような感じだが思い当たる節が何もない。
「侏倭様、何用でございましょうか」