【星野光の術師達】ネタが無くなった

眩しいくらいに日光が照らされている。森の少し深いところまで行くのはひさしぶりかな。・・・実験材料を取りに来たのは良い...。本来ならば『一人』で来るはずだった。

「エテ兄ー!!見てくれ、この蝶々!!エル兄喜んでくれるかな!?」

「ふふ...アル、そんなにはしゃぐと怪我するわよ。」

「はぁ...はぁ...。アル...お前…なぁ!!肩車したまま走るな!!落ちるだろ!」

「あ、ごめん柳兄。柳兄軽いから忘れてた」

「『軽くて』悪かったな!!」


僕は本を視線に落としたまま聞き流す事にした...今思うと迂闊だったと思う。外出許可に学長の部屋に行った、ここは問題ない。許可が出たから準備をしようと自室に戻った、ここも問題ない。学園の扉を...そうか...ここだったな。アルと柳が遊んでいると思って横目に流そうとしたが

【異形団 宗教】

白い暖かい光で目が覚めた。私の好きなお日様の香りがする。...起きないと。鏡を見るとぼんやりした自分がいた。髪をとき、長い髪を帽子に通す。黒い修道服を手に持つと昔を思い出す。教皇様がくれたこの服。もう何年か経つけど今でも大事な宝物。この服を着ると少し楽になる気がする。・・・さて、子供たちを起こしに行こう!

廊下を歩いているとあの香りがした。教皇様が帰ってきたんだ。冷たい雨の臭い。あの人は消えたかと思えば、そこにいる。長年一緒にいるけどが謎が多い人。子供達が寝ている部室の近くにある花瓶に目が止まった。花が変わっている。葉っぱを少し触ってみた。

「確かこの葉っぱは...」


カタバミだ!」

「...ええ、そうよ。よく分かったわね」

いつの間にか子供が数人出てきていた。花に夢中になりすぎたかな。

「おはようみんな。よい朝ね」

「「おはよう、せいぼさま!」」

今日も元気に返事をしてくれる。そんなこの子たちは孤児。親の顔を知らずに生きている。・・・別に顔を知らなくたって生きられないわけではない。

「さぁ、みんな礼拝堂に向かいましょうね」

「「はーい」」



お祈りの時間を済まして、次は朝御飯。厨房に少し早歩きで向かうとまた『あの臭い』がした。それと同時にほんのり甘い香り。ちょっとだけ覗いてみようかな。邪魔をしたら悪いから。少しだけ...そーっと。

【異形団】殺戮男の夜

夜が自分を囲んでいる。自分は館の屋根の上で酒を飲んでいた。館の中はまだ落ち着かない。団員の皆を信用していないわけではない。『暖かい』と言うものに馴れていないだけだ。それにお酒は何かを思いだしそうなので好きだ。
・・・自分は記憶が削れている。一番古い記憶で、この頬から首の傷。軽く傷を触る、何をしても消えることはない。
ふと、思う。何故、団長さんは自分をここ(異形団)に入れてくれたのだろうか。不思議だ。自分自身誰か分からないのに。
そんな事を思いながら自分は酒を飲んだ。液体が喉を通り染みていく。『僕は』この感覚を何処から知ったのだろうか?本に書いてあってもこの行動と感覚は分からないのはずだ。また疑問が増えてしまった...。急いでポケットから手帳を取り出しメモをする。分からないことがあるとメモを取るようにしている、後から役に立つかも知れないからだ。
パラパラと頁を遡っていく。月明かりが夜空を照らす刻、紙の音だけが聞こえた。雲が差し掛かり辺りが暗くなる。自分は、とある頁に目が止まった。

【□□□・□□□□□□】

ただそれだけしか書いていなかった。刻が止まり、音も聞こえなくなった気がした。それと同時に頭の中が曇っていく。何だろうか、この感覚は...。何かを忘れているような、それを思い出したくないような...。記憶の欠片を必死に探ってる。もう少しで分かりそうなのに分からない。

「こんなところで何をしている」

記憶を探すのに周辺を気にしていなかった。振り向くと『或さん』が屋根の端に立っていた。急いで手帳をしまった。

「お酒を...飲んで...いま...した。」

『或さん』の目がほんの少し見開いた。何か変なことを言ったのだろうか?すると『或さん』は早歩きで此方に向かってきた。自分の座っているすぐ近くに腰を下ろし

「俺も飲もうか。」

と言った。何処からか、ウイスキーグラスを取り出し自分に差し出してきた。自分は少し『或さん』に近づき持っていたお酒を注いだ。注ぎ終わるとすぐに『或さん』は口に入れた。飲み終わると穏やかな雰囲気になった。お酒が好き、と言うことはよく分かった。後で日記に書いておこう。そう思い自分のグラスにお酒を注ぎ喉に通した。雲が月を隠そうとした時、『或さん』は此方を向き言った。

「ブリタルは(館の)中に入らないのか」

「・・・時々...お邪魔させて...貰ってま…す」

「そうか、お前が他の奴らと会話してるところを見たことが無くてな。...警戒してるのか?」

「・・・。」

グラスに目を落とした。自分は何も言えなかった。団員さん達を疑っていると言ったら嘘になる。しかしどうしても『癖』で警戒してしまい逃げてしまう。

「すみません...。『昔の癖』で...警戒し...て...。」

最後まで『僕は』言葉を言えなかった。違う、そんな事はどうでもいい。
何を言っているんだ『僕は』
『昔の癖』?いつ何処で『それ』を知った?何故そんな事を言った?

「どうした、顔色が悪いな。体調不良か?」

「だ...大丈夫で...す....っ!!」

頭に激痛が走った。ガラスの破片が脳内に充満しているようだ。取り敢えず、『或さん』から離れよう。迷惑をかけたくない。

「す...み...ま...せん。」

【星野光の術師達】空白の記録[第一章]

エテルネルの家族ってどんな人?

そんなことを授業が同じだった術師に言われた。先程の授業内容のせいだろう。『3時間目:生命の記録』と書かれている自分の手帳を横目に見る。心底、興味もないが「ここ」にいる限りは出来るだけ目立たないようにしなければならない。教師たちが後から小言を言ってくるからね。

「エテ君のお母さんって絶対美人だと思うの。凄く優しくて可愛がってくれそうだよね~!」

「お父さんもスタイル良さそう!」

「・・・何処からそのような想像が沸くのかが謎だね」
半分ため息を混ぜながら言った。

「だって、『親に子は似る』っていうでしょ?」


僕は何故だか冷や汗が出た。違う、違う。


「すまない。用事を思い出したから失礼させてもらうよ」
正常を保てているかが心配だ。

「私、まだエテ君と喋っていたいのになぁ」

「用事なら後回しにしちゃえばいいのに...」

「じゃあ、昼食私達と一緒に食べようよ!」


何故そこまで僕にまとわりつくんだろう。


「これから研究があるから昼食は一緒に食べれないんだ。」

そう言って僕は立ち去った。後ろから

「今度一緒に食べようねー!」

なんて聞こえたので、軽く手を振っておいた。



部屋に戻ってさっきの話を忘れる事にしよう。自室までは近かったので歩いくことにした。
100m先に数人の男の術師が道を塞いでいる。とても騒がしい。

「僕の部屋はそこなんだ。退いてくれないかな」

そう言うと男の術師たちは立ち上がってこちらを睨んだ。何をしているかと思えば下らないことをしているね。


「俺達さ、今楽しく喋っているのに邪魔するなよ」

「ほんとによぉ。お前もそう思うだろ?」

その男が後ろにいた術師を突き出した。

「は...はい...」

彼は顔に傷を負っていた。今にでも泣きそうだ。
推測だけど、弱者虐めだろう。

「君達が楽しく喋っていよう何をしようが僕には関係ない。それとも弱者を虐めるのが趣味なのかな?そう言うのは他所でやってくれ。
...もう一度言ったほうが良いかい?退いてくれないか」

「ってめぇ…!!なめてんのか!!?」

「好きに言いやがって...図に乗るなよ!!」

男たちが杖を出してきた。最近の術師は血気盛ん過ぎないかな。

「泣いて媚びろよ。...氷炎の棘!!」

「消し炭にしてやる...。青龍の雷!!」


技量は良好、しかし魔力効率が悪い。彼らは成長の余地は無さそうだね。残念だよ。

「ニーダーラーゲ(敗北)」

時が静止する。
全ての生命活動が止まり時の刻む音は消える。その間に男たちを違う場所へ転移する。場所は教師たちが沢山いる場所。
もういいだろう。

「アウフヘーブング(解除)」

これで僕は部屋に入れる...はずだった。


「助けて頂いて...。あ...ありがとうございます!!」

君は僕の耳を壊す気なのかな?至近距離すぎるよ。

「僕は君を助けることをしていない。気のせいだよ。」

「あの人たちを追っ払ってくれたんですから、助けてくれたのも当然です。なんてお礼をしたら良いか...」

少年の目には涙があった。

「今回は君の運が良かったんだ。僕がいたからね。
次は、どうするのかな。」

少年は口を閉じて下を向いた。泣いているのだろう。そうだろうね。下は何も出来ないのだから。

「だって...どうせ何を言っても暴力されるだけで...何も解決...しないんですよ!!」

してもいないことをよく言えるね、僕は近づいて少年の顔に手を添え目線を合わせた。


「君は一つ間違っているようだね。」

「何を...ですか?」

「あのような者達には一度強く言わなければ何も学ばない。言わなければ図に乗るだけだよ。」

少年は大きく目を見開いていた。その瞳は輝いているようにも見える。
手を離しても少年は僕を見ていた。

視線が強かったが僕は自室の扉を開き部屋に入った。